【イケメン戦国】*ヒメゴト* 戦国時代に舞い降りた現代の姫
第5章 懐疑心は忠誠心 短気は損気
「由里様、できましたよ」
「ありがとうございます!」
そのあと、すぐに女中が現れ、由里がさんざん悩んでいた着付けも瞬く間に終わってしまった。
さすがプロは違う、と納得いくものである。
そういえば三成はいまだに待ってくれているのだろうか、と考えながら、由里は足早に扉に向かった。
ガラリ。
「石田さん!」
「由里様、――――――っ」
予想通り、三成は律儀に部屋の外で待っていたのだった。
「着替え、遅れてすみませんでした」
「いえ、構いません。それより、先ほどは申し訳ございませんでした」
先ほどのことを思い出してか、三成は少し頬が赤い。
「こちらこそ……着物って着るの難しいですね?」
「ふふ、そんなことをおっしゃるのは由里様が初めてです。
……とてもよくお似合いですよ」
微笑みながら三成は言った。
きっとこれは本心なのだろう。今度は由里の頬が赤くなる番だった。
(すっごいエンジェルスマイルだ……!)
その笑顔は、疲れも吹っ飛んでしまいそうな、まさに天使の笑顔。
きっと女性はこの笑顔に虜になるだろう、そんな感じだ。
「時に由里様、石田さんという呼び方と敬語をやめていただくわけには参りませんか?」
「え?」
「私は信長様や秀吉様に仕えている身……敬語や敬称が不慣れなのです。
それに……(少し、お近づきになれるのだろうか)」
「それは構わないけど……それに?」
由里は素っ頓狂な三成の提案に、三成の思いも知らずに頷くだけだった。
由里の問いかけに三成ははっとして、言い直る。
「いえ、そちらのお着物は自ら信長様が選ばれたのです。
きっと似合うと言ってくださると思いますよ」
「へー……信長、様が。彼、女の着物なんて好きに選べって言いそうじゃない?」
「そうですね……いつもはそうです。
でも由里様に関しては、ご執心のようですよ。
さあ、信長様がお待ちです。参りましょう」
「うん、行こう、三成、くん?」
「はい」
三成は、嬉しそうに由里を見つめていた。