【イケメン戦国】*ヒメゴト* 戦国時代に舞い降りた現代の姫
第5章 懐疑心は忠誠心 短気は損気
「着物、自分で着る練習しておくんだった」
由里はぼそりとつぶやいた。
しかしもう遅い。実践する機会が来てしまったからだ。
国元財閥の一人娘として産まれた由里は、家柄の影響で一般人より人前に出る機会が多かった。
といってもお飾りや見せ物という扱いで、ただもてはやされるだけというのは否めない。
背の丈ほどあるドレスやワンピース、着物だってもちろん着る機会はあったのだ。
また成人式や大学の卒業式にも、いっぱしの着物袴で出たものだ。
だが、それは着せるための女中や手伝いがあっての話。
着物など一人で着たことがない。
現代の下着にあたる襦袢は良い。着物自体を羽織るのも良い。
問題はそこからだった。
ちなみに、つけていた下着は、ないとスース―として逆に気持ち悪いので、つけておくことにした。
もちろんこの時代では一人で着られる人が普通だろうから、城使いの女中さんも、遠慮して部屋をでていってしまったのだった。
(困った……)
コンコン
と、そこへ。
「由里様、いかがですか?」
聞こえたのは三成の声だった。
安土城に着いてからは彼と合流し、この着替え部屋に案内され、この着物に着替えるよう指示されたのだった。
しかし、まだ完全に着れていない由里は、当然慌ててしまうわけで。
「わ、えっと、ちょっと、まっ……」
「っ由里様!? どうかしましたか?」
バタリ。
「―――――あ……」