【イケメン戦国】*ヒメゴト* 戦国時代に舞い降りた現代の姫
第4章 夜駆ける
すると、政宗の腕の中の由里が、わずかに身じろぎして、眠っていたからか微かに鼻にかかってかすれた声を出した。
そして、長いまつ毛が揺れ、目が開かれたのである。
「……あれ……、寝ちゃってた……?」
まだ眠い、という感じで目をこすった由里は、当たり前のように政宗に身体を預けたままである。
果たして、ここが馬上で、今もまだ走らせている途中というのは気付いているのだろうか。
「由里の寝顔をもう少し見ていたかったが、残念だ」
「っ!!」
本気か冗談かは知らないが、こういうことを普通に言ってしまえる政宗に、由里は感心しつつも、動揺していた。
「いや……ね、馬が」
眠い目をこすり、由里は彼らの思いもよらない言葉を発したのだ。
「馬? 速すぎて酔ったか?」
「ううん。もっと速いのに慣れてるから」
「は?」
「あとで話す……ごめん、いつも夜は6時くらいまでしっかり寝てるから……ねむ……」
「お、おい。由里!? もっと速いってどういう……
………………寝てる」
言い終わる前に、由里はまた重い瞼を閉じてしまったのだ。
そして由里の先の言葉に、再び政宗の心に炎を宿らせた。
「今の……もっと速い馬がいるってことか?
面白いじゃねえか。聞き出して勝負だ」
「…………」
秀吉はというと、さらに疑念を強めたのか無言であった。
「着いたぞー起きろー」
さらに数刻馬で駆け抜けたところに、ようやく目的地が見えてきたのだった。
「うーん……う!?」
目をぱちくりさせ、驚いた由里。
そのすぐ目の前にあったのは、政宗の顔だった。