【イケメン戦国】*ヒメゴト* 戦国時代に舞い降りた現代の姫
第4章 夜駆ける
割って入ったのは、秀吉の横にいる男――眼帯で右目を隠している――である。
馬から見下ろすその目は、好戦的、挑戦的といっても良いだろう。
笑顔の口のその端に、何か含みが感じられるのだ。
その目に、少しだけ酔ってしまいそうだった。
「伊達政宗だ、一緒に来い、由里」
「わっ……」
気付けば由里は馬の上から、片手が軽々と抱き寄せられてしまった。
有無も言わせず、である。
(今度は伊達政宗か!)
「お前、よくわからない理由で信長様の御前から姿をくらましたらしいな?」
「そ、それは……」
(いわゆる、逃げたというやつです)
すると政宗は口の端をさらに上げてクツクツと笑う。
「お前、そうとう肝の据わった女だ」
「由里……お前を信長様の前に連れてこいとの命だ」
突然降りかかる、秀吉の言葉。
「え!?」
「信長様は、すでに出発なさったのだ」
「え!?ちょ、」
「不本意だが、お前の嫌疑は後で問うことにする、夜明け前までに着きたいからな……。
政宗、落とすなよ」
「当然。由里、つかまってろよ?」
由里の言葉を聞き入れるわけもなく、元来た道を走り出した、秀吉と政宗。
今度は、政宗の甲冑に必死にしがみつく、由里も連れて。