【イケメン戦国】*ヒメゴト* 戦国時代に舞い降りた現代の姫
第4章 夜駆ける
「なっなんで……待ってよ!」
その言葉を聞く暇もなく、彼らは踵を返して去っていった。
もう、人影も物音もない。
「行っちゃった……」
最後に彼―動きやすそうな、まるで忍者のような恰好をした―から放たれた言葉が忘れられない。
(ここがどこか、なんでいるのか、もしかして知っているの?)
彼は、とても怪しい恰好だったといっても過言ではない。
でも、それは由里の常識の話で、この時代であれば(本当にタイムスリップしてきたのなら)普通の恰好なのかもしれない。
そう、現代でいえば、自衛隊が着るような迷彩服のような。
わずかな月夜に光るそれはメガネだった。
その奥までは知ることもできなかったが、声色からひどく心配するような雰囲気を漂わせていた。
ともあれ、由里の当分の目標ができた。
――忍者の彼を、探し出す。
そのためには……。
すると。
遠くから規則正しい、馬の走る音が聞こえるのがわかった。
「そこにいるのは誰だ!」
幸村からもらったたいまつで居所がわかったのだろう。
由里のもとに足音が向かっている。
「!お前が由里か!」
瞬く間に由里の元に着き、馬を落ち着かせている。
馬から見下ろす、大の男だった。
「誰!?」
もちろん、検討はつく。
誰がというより、どこの家来か、だが。
「俺は豊臣秀吉だ。お前が由里と申す者か!?」
「そうです……って、えっ豊臣秀吉!?」
さすがに、今更ではあるが由里は耳を疑った。
最初に会ったのは、織田信長に石田三成。
考えてみれば、ここで彼――豊臣秀吉の名前がでないはずもなかったのだ。
「お前、俺を知っているのか?」
「いえ……お初にお目にかかるとおもいます……」
由里は、名前は学生時代にさんざん勉強して知っているが……と心の中で付け加えた。
「まぁまぁ、そのへんにしておきなよ秀吉くん。
彼女、委縮しちゃってるよ」