【イケメン戦国】*ヒメゴト* 戦国時代に舞い降りた現代の姫
第4章 夜駆ける
「少し休憩するか……ん?
どうした、政宗」
数刻ほど馬で走ったところだった。
馬の息も少々きれたところで小さな泉を見つけ、秀吉と政宗は馬を止めたのだが、政宗が馬から降りないので問う。
「いや……ね」
しー、と、指で口を押える仕草と、小声。
「おいおい……」
「ああ、寝てるみたいだ、由里」
秀吉は驚きを隠せなかった。
夜明けまでには着け、と信長に言われ、速さが自慢の政宗と陣を飛び出し、女を連れてきたのである。
無論、今までの道も由里が乗っていようと、手加減したつもりはない。
「そんなに俺の馬の乗り心地が良かったのかねえ」
「肝が据わってるってことだろ。信長様や三成にたてついたという話だ」
聞けば、信長様の話を折ったらしい。
聞けば、信長様の話の途中で逃げたらしい。
なんて無礼な女だ、由里というやつは。
それに何よりも、信長様を助けたからといって、何かの目論見があった可能性も決してなくはない。
この乱世だ。
信じさせて裏切るなど、常套手段なのである。