【イケメン戦国】*ヒメゴト* 戦国時代に舞い降りた現代の姫
第3章 どうやら夢じゃないらしい。
すると、見かねたのか後ろにいた人が由里を気にかけて問いかけた。
スルリ、と、由里の手をとった。
「!」
その仕草は息をするように自然で。
目が合った。
「今日は、寺が焼ける事件が起きた。
君のような可憐な女性は早く帰ったほうが良い、
……なんなら一夜を共に過ごそうか?」
「はい!?」
その甘い言葉(!?)に目を白黒させる由里。
さすがに、財閥のパーティに参加した時も、そんなに大胆な告白を受けることはなかった。
「信玄様、すごい趣味ですね……こんなイノシシ女と」
「フフ……汚れていても傷がついていても、原石は原石。光っているんだよ、幸村」
「はあ……」
止まらない口説き文句に、幸村と呼ばれた、たいまつさんは少し飽きれている。
(しんげん……?ゆきむら……?まさかね)
すると、一人の青年がはっとして闇を睨んだ。
「謙信様、信玄様、幸村……そろそろ」
「ああ」
ユラリ、たいまつがわずかに揺れた。
「送らないで平気か?」
「えっ……うん、大丈夫」
「俺たち、そろそろ行かなきゃいけない。これ、持ってけ」
持っていたたいまつを渡す、たいまつさん。
「えーっと、ゆきむら?」
「ん?」
「ありがとう」
「!」
わずかに頬を染める幸村。
暗がりということもあったのかもしれない、そんなことを、由里は気付くはずもなく。
「じゃーな」
「また会おうね、可憐なお嬢さん」
他の口をきいていない1人を先頭に、
名残惜しそうに、その場を立ち去るのだった。
口をきいていない、残りの1人の、口元がわずかに動いた。
「!!!」
【また必ず会おう……君は、現代人だろ?】