第1章 【 君への贈り物 】
「はい…」
掠れ声になりながら、そう答えた瞬間
ふっと政宗から笑い声が聞こえる。
そうかと思えば…
「きゃあっ!ちょっ、政宗っ!」
急に政宗に体を持ち上げられた。
「安心しろ。そうなる前に俺が奥州までかっさらってやるよ」
(…またこの人は…。すぐ人をからかう)
「っ…そうなる前に家康のところに逃げますっ!」
顔を真っ赤にしながら言いきった。
するとニヤリと政宗が笑う。
「へぇ~。それはますます奪いがいがありそうだな…面白い」
「っ…いいから下してくださいっ!」
そう言いあっていると
「じゃれ合っているところ悪いが…そろそろ、戻らないとさすがに怪しまれるんじゃないか?」
にやにやしながら光秀さんが口を挟む。
(じゃれ合ってないっ!)
そうツッコミを入れたいけど、
入れたら入れたでまた同じことが繰り返される
そう思って私は言葉を飲みこんだ。
光秀さんの方を向き、はあとため息をついた政宗は『仕方ない』と言って渋々私を下におろした。
(助かった…)
ふうと胸をなでおろし、光秀さんの方を見る。
すると真剣な瞳の光秀さんと目が合う。
「くれぐれも約束は守れよ?」
ぽんぽんと頭を撫でた後、光秀さんは踵を返して歩き出した。
政宗も『じゃあな。楽しめよ?』とだけ言って光秀さんの後に続いた。
私は2人の背中を見た後、はっと我に返り
慌てて家康のいる表へと足を向けたのだった。