第1章 【 君への贈り物 】
するとふっと笑いをこぼした光秀さんが私の前にしゃがみ込む。
「そう怒るな。…悪かった」
そう言って光秀さんは慰めるように頭を優しくなでた。
「…悪いと思うなら、もうしないでくださいね」
私は軽く睨みつける。
すると光秀さんは
「…それは、約束できんがな」
そう言って相変わらず妖しく笑った。
(…ダメだ。ラチがあかない)
私は諦めたようにため息をつき、愉し気に笑う政宗と妖しく笑う光秀さんを見据え
「…で、なんで私はこんなことされたんですか?」
話を進めた。
「ああ、…杏に頼みたいことがあってな」
そう言って政宗も私の前にしゃがみ込み、懐からあるものを取り出した。
「これを…宿についてから家康に渡してほしい」
『壱』と書かれた茶色く四角ものを渡された。
「これ…なに?」
「お前は知らなくていい。…くれぐれもここで俺たちに会ったことを今家康に話すなよ。」
「もし口がすべってみろ、…その小さくてかわいい唇を縫いつけてやる」
読めない笑みを浮かべながら、淡々と告げる光秀さん。
冗談か本気かわからない光秀さんの表情を見た途端、背筋に冷たいものが走り、顔が強張る。