第1章 【 君への贈り物 】
「…ちょっと聞いてくるから、ここで大人しくしてなよ。」
「う、うん…ごめん家康」
相変わらずツンっとした言い方だけれど、目を見れば怒っていないことは一目瞭然だった。
翡翠色の瞳に優しさが溢れているから…
(せっかく家康と一日デートできる日なのに…情けないな…)
でも一体どこで落としたんだろう
もしかして、あの時かな?
私は安土城で家康を待っていた時に
急ぎ足の男性とぶつかって転んだのだ。
(あの時しか他は思い当たらないし…)
自分のどんくささに呆れ、はあと小さくため息をこぼし、肩をすくめる。
そして少し先にあるお店へと向かう家康の後姿をじっと眺めた
すると突然後ろから何者かに口を手で塞がれ、ぐいっと手首を引っ張られる。
(なっ何っ!?家康っ――…)
「ん――っ!ん―――っ!」
私は必死に抵抗を試みるも、あっという間に細い路地裏に引き込まれた。