第1章 【 君への贈り物 】
それから一刻が過ぎ、
子の刻になろうとしていた。
睡魔に襲われ、段々瞼が閉じ始める。
はっと我に返り、頭を全力で左右に振る
(家康が頑張っているのに、寝たらだめっ!)
自分にそう言い聞かせ、瞼をこすった。
すると、すっと襖の開く音がする
開かれた襖を見ると
目を見開いた家康が立っていた。
私は待ちわびた愛しい人に駆け寄り抱き着く。
「おかえりなさいっ」
「ちょっと、暑苦しいんだけど。」
それでも離れない私に諦めたように
ため息をつく。
「…ただいま。まだ起きてたの?」
久々の家康の温もり…。
私は幸せに浸りながら、顔を覗き見て微笑む。
「…ちょっとでも家康の顔が見たくて」
一瞬目を見開き、頬をほんのり桜色に染める家康。そして目を細めて私を見つめる。
「はあ、そんな可愛いこと言って…俺を振り回してどうするつもり?」
優しさと熱を帯びた目で私を見つめる家康。
そんな顔で、瞳で見つめられたら…
私の顔に熱が集まる。
「…ふ、振り回されているのは、お互い様だよ…?」
それだけ言って私は逃げるように顔を背けた。