第1章 【 君への贈り物 】
家康に手を引かれるまま、
月の光と火をともした蝋燭の灯りを頼りに
虫の鳴き声を聞きながら歩いた。
少し呼吸が乱れてきた頃、せせらぎの音が聞こえ始めた。
「着いた」
そう言って家康は川の近くへ行き、持っていた荷物を下に置いた。
家康は風呂敷を開け、何かを取り出す。
(何を出しているんだろう)
私はひょいっと家康の手元を覗いた。
すると思いもしなかったものが目に入る。
「これって、…ランタン?」
「…杏が見たいって言ったんでしょ?」
「え…?」
しまったというような顔をした家康は
バツが悪そうにぷいっと顔を反らす。
頬を真っ赤に染めながら…
以前、家康の御殿で秀吉さんと三成くんを含めた4人でお茶をした時があった。
お祭りの話で私はランタンのことを思い出し、ぽつりと独り言を呟いたことがあったんだけど…
まさかそれを家康は聞き逃さず、覚えてくれていたとは思いもしなかった。
(嬉しい…)
思わず頬がほころぶ。
「家康、ありがとうっ!!」
私はとびきりの笑顔を向けた。
「別に…お礼を言われるようなことしてない」
そう言って照れを隠すように私から蝋燭を取りあげ、手に持っているものに火をともした。
熱気で段々和紙が膨らんでくる。すると先ほどまでは暗くて気付かなかったものが見え始めた。
私は何かわからず、じっと見つめた。
そしてそれが文字であると認識した瞬間、
私は勢いよく家康の方を見た。
「これ…」
「いいから、読みなよ」
「うん」
私はランタンに書かれている文字に視線を戻した。