第1章 【 君への贈り物 】
しばらくすると家康が帰ってきた。
そして、豪華な食事を2人で堪能した後は
縁側に座って庭を見ながらお茶を飲んでいた。
もう辺りはすっかり暗くなり、
風も少し冷たい。
虫の音を聞きながら、風情に酔いしれていると
「…杏」
後から優しい声がした。
と同時に後ろから逞しい腕で抱きしめられる。
「い…家康?どうしたの?」
振り返りたくても身動きが取れない。
「…そのままじっとしてて」
(?)
するとふわっと何かが羽織られた。
「…外少し冷えるから、それでも羽織っていなよ」
そう言って家康はそっぽを向いてしまった。
羽織られたものに目を向けると
それは私の好きなオレンジ色に染められた花柄の羽織だった。
(家康、私の好きな色と花が好きなこと覚えてくれてたんだ…)
「覚えてくれてたんだね、ありがとう」
「…別に。ただ杏に似合いそうな色と花だったから選んだだけ。」
ささいなことを覚えていてくれたことが嬉しくて、頬がほころんだ。
羽織をじっと眺めていると、ある部分にふと目が行く