第1章 【 君への贈り物 】
するとなぜか
家康はすっと私の前に手を差し出した。
???
私は不思議に思って首を傾げる。
そんな私の様子を見た家康は、はあと大きなため息をついた。
「…手貸して。…いいから早くして」
私は言われるまま、家康の手を差し出す。
私の手を握った家康は呆れた顔から一変、優しい顔つきになる。
「…これでもう勝手にどこかいけないでしょ」
そう言って前を向き歩き始めた。
私は前を歩く優しい背中を見つめる。
(言えないって察してくれたんだろうな…)
家康の不器用な優しさに胸が温かくなった。
「…家康、ありがとう」
そうぽつりと私が呟くと
返事をするように家康が握る手に力を込めてくれた―――