第1章 決意
「えー?あ、どこか行きたい場所とかあるの?」
わたしが返事をするより早く、彼がわたしの手から地図を奪い取った。
『え、あっ、ちょっと!』
「えーっと……ふむふむ……。って、え!?」
彼はわたしから奪い取った地図をどこかふざけた感じで眺めていたかと思うと、急に驚いた声を上げた。
わたしはその声に、何事か、となぜか少し身構えた。
「キミ、もしかして……詩乃ちゃん……?」
『は、はい……そうですけど……』
まさか知り合い?
いやいや、それはない。だって、わたし、この人知らないもん。
だとしたら、彼がわたしのことを知っている?
なんで?
あっ!
よくある、めちゃくちゃ小さい時の幼なじみで、「俺のこと覚えてる?いや、覚えてるわけないか……」とかいうやり取りのパターンとか?
それか、最近のなんぱさんは相手の名前まで把握済み?ん?あれ?
そもそも、なんぱってどういうものなの?
あとで調べないと。
まあでも、幼なじみ、っていうのはないかな。
だって、わたし孤児院で育ったし。
じゃあ、誰……?