第1章 決意
律さんが、急に何かを思い出したようで、手のひらの上に拳をぽん、と打つ。
「あ、そうだった!お前の荷物、部屋に運んでおいたからな」
もう届いてたんだ……。
『うん。ありがとう』
「はいよ」
「じゃあ、そのついでってことで、律が彼女を案内してあげて」
「真にいがすりゃいいじゃん!」
「俺は今から夕飯の準備があるから。頼んだよ」
「はいはい、わかりやしたー。行くぞー」
『う、うん』
気づけば、もうすでに律さんはリビングを出て廊下でわたしを待っていた。
わたしの部屋、用意してくれてるんだ……。
嬉しいな……。
家族の一員みたい。
『あの……』
「ん?なに?」
『理沙さんは?』
理沙さん、今日は帰っているはずだ、ってパパから聞いていたのに、今日は一度も見ていない。
「ああ、母さん?母さんなら部屋で寝てるよ。フランスから帰ってきてばっかで疲れてんだよ」
『あ、そうなんだ……』
もしかして、迷惑かけちゃったのかな……。