第4章 はじめての気持ちとありがとう
しばらく歩いて、水路の横にあるベンチに座った。
『10年後の私ってどんな人?』
フランと同じ質問をしてみた。
スクからはどんな答えがかえってくるんだろう。
「そうだなぁ…」
んー…とスクはしばらく考える仕草をした。
「…アホだな。」
『へ?』
「あいつはアホだぁ…自分のことを大事にしねぇで自分の大切なもののことだけ考えてる。」
彼がまゆを潜めながらそう言った。
「怪我してもへらへら笑って…でも他人が怪我するとガキみてぇに泣きわめく。いつも強がり言ってるが、人1倍寂しがり屋だし泣き虫だ。」
「ま、そこがあいつの長所でもあると思うぜ?実際俺はあいつのそんなところに…」
スクの口が止まった。
『…?そんなところに…?』
「…何でもねぇ、とにかく10年後のお前はアホだってことだ。」
『褒めてるのかけなしてるのか…』
「両方だ。…あー…小腹が空いたな…」
話がひと段落ついたあと、彼がそう言った。
「少しここで待ってろ、ピザ買ってきてやる。他になにかいるか?」
『え、私も行きます!』
「まともにイタリア語喋れねぇやつと一緒でもめんどくせぇだけだ。お前はここから一歩も動かずに待ってればいいんだよ。」
『わ、わかりました…』
「一歩も動かずに、待ってろよ?」
『わかったってば!!』
ははっと笑って横に座ってたスクは立ち上がり、細い路地に消えていった。