第1章 動き始める
『スク〜』
名前を呼んでドアを叩く。
…けど返事はない。
『ねぇちょっと聞いて?』
返事はないけど、私は話し始めた。
『私はさ、10年前の私と入れ替わって、しばらくスクの近くにはいてあげられないけど、みんながいるじゃん。10年前の私だっているし。』
返事はない。
『…あのね、10年前の私ってたぶん、結構愛想悪いと思うの。スクに話したと思うけど、ほら、私ってボスとおんなじで9代目に助けられたって。』
『9代目とか、10代目の役に立とうと思って、たぶん強さしか求めてないと思うの。でもね、ここに来たらその考えが変わると思うし、強さってものがよくわかると思うんだ。だからね、スク…』
『10年前の私にも、いろいろ教えてあげてね?』
そう言った瞬間、ドアが開いて、スクが私のことを抱きしめてきた。
『…スク泣いてる?』
「…うるせぇ…」
スクは、私といると泣き虫になるんだ。
可愛いでしょ。
そんな時私は、彼の背中をさすってこう言うの。
『スク、大丈夫だよ。
私はあなたを愛してるから…』
彼の抱きしめる力が強くなった気がする。