第1章 出会い ★
目を覚ますと、夕方だった。
テーブルの上にはおいしそうなご飯が。
部屋の角の方にチョッパーがいた。
「あの…チョッパー?」
チョッパーがびくっと振り返った。
「びっくりした!起きたのか〜!具合はどうだ?ちょうど今サンジがメシを置いて行ったところだゾ」
「頭痛も良くなったし、もう平気よ。すごいお医者さんなのね」
「そんなに褒められても嬉しくねーぞ!コノヤロー!」
…嬉しいのね、可愛い。
「昼のサンジのメシ、うまかっただろ?あれも効くんだぞ!」
「ご飯って、やっぱりあのサンジ…さんが作ってるの?」
「おう!サンジは一流のコックなんだ!」
チョッパーは誇らしげに教えてくれた。
(あの怖そうな人があんなに美味しいお料理を作るんだ…
って失礼だよね、私。)
「みんなレナに会えるのを楽しみにしてたぞ!明日、体調が良かったら朝メシ一緒に食いてぇな!」
「ありがとう、チョッパー。たぶん大丈夫だから、行かせてもらうね。船長さんにお礼も言いたいし」
夕食を食べている間、チョッパーはこの船のことをいろいろ話してくれた。
クルーのこと、冒険のこと。
この船が海賊船だということも初めて知った。
(こんなに親切な海賊もいるんだ…)
レナが知る唯一の海賊は、略奪を繰り返していた。
レナのすべてを、その海賊に奪われた。
故郷も、家族も、レナ自身も。
「そういえば、レナはなんで海に流されてたんだ??」
「それは…」
レナは考え込んだ。
「あ、やっぱいいや。明日また誰か聞くと思うから、おれもそのときに聞かせてもらうよ」
「…うん。明日話すね」
「それじゃ、今日はゆっくり休んでくれよ!」
そう言ってチョッパーは、空になった食器を持って部屋を出た。
1人になったレナは、明日のことを考えていた。
レナがあの船で経験したことは、そう簡単に話せるものではない。
あんなこと、誰にも言えない…
(過去のことは忘れよう。もう、思い出すこともしない)
過去との決別を決心し、レナは眠りについた。