第5章 嫉妬
翌日、レナは自分の仕事がひと段落したので、甲板に出て海を眺めていた。
サンジはまだキッチンにいる。
他のクルーは甲板で読書をしたり、遊んだりしていた。
「よう」
声をかけてきたのはゾロだった。
「どうだ?最近は」
「元気にやってるよ、ありがとう」
ゾロはよくこのように声を掛けてくれていたが、しばらくあいていたので今日は久しぶりだった。
「だろうな。最近は特に楽しそうにしてるじゃねぇか」
「うん、この船にも慣れてきたし、皆優しいし、毎日楽しいの」
「…それだけか?」
ゾロがあやしげにレナを見た。
レナは首をかしげる。
「お前…あのエロコックに惚れてるだろ」
「えっっ」
レナは慌てて周りを見回した。
幸い、二人の会話を聞いている者はおらず、皆それぞれ自分のことをしているようだった。
「…なんでそう思うの?」
レナは何とか冷静を装って尋ねた。
「…ずっとお前を見てりゃわかる」
ゾロが意味ありげにそう言ったが、レナは恥ずかしさと気まずさでゾロの含みのある様子に気がついていなかった。
「好きなんだろ?アイツのこと」
レナは、自分の過去を唯一知っているゾロには白状してもいいかも…という気になっていた。
「……うん…」
レナは顔を真っ赤にしてそう言った。
「ナミにも、誰にも言ってないんだからね!絶対秘密にしてね!」
慌ててそう言うレナの顔は、完全に恋をする女の顔だった。
(…こんな顔…するんだな…)
ゾロは少し、胸が痛むのを感じていた。
「お前は今…幸せか」
ゾロはレナをまっすぐ見た。
「うん…幸せだよ。片想いだけどね」
「そうか。お前が幸せならいいんだ」
そう言い残し、ゾロはその場を離れていった。
(ゾロにばれてたんだ…なんか恥ずかしいな…)
レナはまた自分の顔が赤面していくのを感じながら、ゾロの背中を見つめていた。
このやりとりの一部始終を、キッチンの陰から見ていた人物がいることに、二人は気づいていなかった。