第4章 二人の恋
サンジはテーブルに置き忘れていた財布を手に取り、店を出た。
(レナちゃんを待たせちまって…わりぃな。綺麗なビーチがあるらしいから連れて行ってあげたいんだが…行ってくれるかな…)
サンジは昨日の晩から考えていたデートプランを頭の中で思い返す。
(って、デートじゃねぇっつーの)
一人でツッコミを入れつつも、サンジは朝からずっとデート気分だった。
(デート気分は俺だけか……あれ?レナちゃん、誰かと喋ってる?)
先程引き返した場所に近づくに連れレナの姿が見えてきたが、男と話しているようだ。
よく見ると、男がレナの手を取っている。
サンジは走るスピードを早めた。
「俺の女に…何か用か」
低い声で言いながら男とレナを引きはがし、レナを抱き寄せるサンジ。
「…道をきいただけだよ」
そう言って男は去って行った。
怒り、嫉妬、独占欲…
様々な感情がサンジの中でうごめいていた。
道をきいただけでないことくらいわかっている。
サンジはレナの手を引いて早足で歩いた。
「ちょっとサンジ…!どこ行くの?」
レナが後方で聞いているが何も答えず足を進める。
(あの男…レナちゃんに気安く触りやがって…レナちゃんももしかして、俺よりあの男がいいと一瞬でも思ったのか)
サンジは男の顔を思い出した。
爽やかそうで、女にモテるタイプかもしれない。
レナは今どんな顔をしているのだろうか…
レナがもし自分よりもあの男がよかったら…残念そうな顔をしていたらどうしよう。
そう考えると、怖くてレナの顔を見れなかった。
(しかも「俺の女」なんて言っちまった…恥ずかしくて申し訳なくて合わす顔がねぇ)
街の中心部からどんどん離れ、街の外れの方までやってきた。
木が生い茂った道を歩いていると急に視界が開け…キラキラと光るビーチに出た。