第4章 二人の恋
不寝番と言っても今は島に停泊しているので、海の様子は変わることはない。
敵船もこんなところでは襲ってこないだろう。
何かあったときのために一応、ということで島にいるあいだも不寝番は回ってくるようだ。
レナは展望台で空と海を眺めていた。
(…暇だわ…毎晩誰かがこんな気持ちで見張りをしてくれてたんだ)
暇ということは何事も起こっていないということなので、悪いことではないのだが…時間が過ぎるのがとても遅く感じる。
(皆はいつも何してるんだろう)
他の仲間は本を読んだり、トレーニングをしたり、新しいメカや武器をつくったり……眠ったりとそれぞれ自分のやり方で時間を潰しながら見張っている。
レナは今のところ、真っ暗な海と空を眺めることくらいしか思いつかなかった。
(この船に来てまだ少ししか経ってないけど…この船の皆に助けてもらえて本当に良かった)
レナは自分の運命を変えたあの嵐の日のことが頭によぎった。
(あの嵐がなければ…まだ私は…)
急に、パン、と何かが弾けたように、過去の記憶が頭に流れ込んできた。
思い出すまいと決め、ゾロに話したあの日から閉じ込めていたあの記憶が、映像となって頭に流れる。
フリークが自分の上で腰を振る様子、自分の身体に触れられる感触、自分の艶めかしい喘ぎ声…
「…っ……」
レナは呼吸をするのもままならなかった。
涙が止め処なく流れてくる。
胸が苦しい。
身体が震える。
(思い出しちゃだめっ……お願い…)
レナの思考とは裏腹に、その映像は止まってくれない。
「レナちゃん!!」
自分を呼ぶ声が聞こえ、我に返った。
声の主は、サンジだった。
レナに飲み物を持って来てくれたのだ。
「ハァ…ハァ……サン…ジ…」
サンジはしゃがみ込んでいるレナに駆け寄った。
レナの顔は涙でぐしゃぐしゃで、苦しそうに呼吸をしていた。
「レナちゃん、何があった?大丈夫?」
「ごめ…なさい…ちょっと考え事…してて…」
言い終わらないうちに、サンジはしゃがんだままのレナを抱きしめた。