第2章 追憶 ★
今から2年前、ラグラン海賊団がレナの住む平和な港町にやってきた。
その船長、フリークが仲間数名を引き連れてレナの両親が営むレストランにやってきたのは本当だった。
しかし気に入ったのは料理ではなくレナだった。
フリークはレストランに入ってくると同時に買い出しに出かけたレナを見つけた。
「行くぞ」
そう言ってフリークは再び仲間を連れて出て行った。
レストランに入ってすぐに出て行った客を、レナの両親は不思議そうに眺めていた。
「…お前はあのレストランの娘だな」
声をかけられたのは、ちょうど八百屋の前だった。
レナが振り返ると、黒髪で背の高い男が立っていた。
男の後ろには仲間らしき人が数人いた。
「こいつに決めた。連れてくぞ」
男が仲間にそう伝えると、仲間のうちの2人がレナの両脇にまわりがっちりと腕をつかんだ。
「いやっ!!離して!!」
レナが大きな声で叫ぶと、通行人達の目を引いてしまった。
レナの正面にいる黒髪の男は片手でレナの顎を掴んで自分の方を向かせた。
「俺たちは海賊だ。おとなしくついて来りゃ悪さはしねぇ。ただし逆らったら…お前の両親を殺す」
初めて海賊というものを見たレナは、恐怖しかなかった。
海賊達が本気で両親を殺すと言っているのか、ただの脅しなのかはわからなかったが、海賊=悪という一般的な知識しかなかったレナは、おとなしくついていくという以外の選択肢が見つからなかった。
騒ぎが収まったかのように見えたのか、レナ達に注目する者はいなくなっていた。
レナは海賊に両腕をそれぞれ掴まれ、黙ってついていった。