第2章 追憶 ★
「ゾロ…」
避けられていたと思っていたゾロに声を掛けられたが、ゾロの険しい顔を見ると嬉しい気分にはなれなかった。
まるで敵を見るような顔で、レナのことを見ていた。
「俺はまだお前のことを仲間と認めちゃいねぇ。この船の奴らはすぐに人を信用しちまう。疑う奴が一人でもいねぇと、いつか痛い目を見るんじゃないかと思っている」
「……」
ゾロの言いたいことはよくわかる。
海に流れていた素性のわからない女の話を信じ、仲間にするのはリスクが高い。
「お前の話には矛盾がある。お前をさらったその海賊、店の料理を気に入ったのならなぜただの手伝いのお前を連れて行く。料理を作っているのは父親か母親だろう」
レナはゾロをまっすぐ見つめた。
「もう一つ。お前は一年間、逃げるチャンスがなかったと言ったが、ただの料理や雑用係のお前に四六時中見張りでもついていたのか?それとも鎖で繋がれでもしていたか?」
ゾロもレナをしっかりと見ている。
「ここからは俺の推測だが…お前は何か特殊な能力でもあるんじゃねぇのか?能力を欲しがったその海賊に連れ去られ、部屋に監禁でもされていたんじゃねぇのか?お前は戦えないと言ったが、本当は戦えるんだろ?」
半分は間違っている。半分は本当だ。
「本当のことを話せ」
そういって、ゾロは刀に手をかけた。
「話さなければ…斬る。仲間のためだ」
「……」
本当のことは誰にも言いたくなかった。
しかし、この人だけは…ゾロだけには話さなければいけないのかもしれない。
「…今朝話したことは…嘘もいくつかあるわ。ごめんなさい」
レナは頭を下げた。
ゾロは黙ってレナを見た。
「戦えないのは本当よ。私に特殊な能力なんてない。ただ、どうしても本当のことを言いたくなかっただけ。けど仲間になるのに過去を隠すのはよくないよね…」
レナは視線を落とした。
「今から本当のことを話すわ。そのあとみんなに話すべきかどうかは…ゾロが決めて」
「わかった。話せ」
ゾロは冷たくそう言った。
「少し長くなるけど、最後まで何も言わないで聞いてね」
レナは静かに話し始めた。