第10章 記憶
ーアイツは…あの船の船長に犯されていた…二年間ずっと…ー
キッチンに戻ったサンジは、ゾロからきいた話を頭の中で繰り返していた。
(レナちゃんに…そんなことが…)
レナの過去を想像しただけで、サンジは辛くなった。
(怖かっただろう…苦しかっただろう…やっとの思いで逃げられたのに…俺のせいでまた…)
レナの過去にどんなことがあったとしても、今回のことは絶対にあってはならないことだ。
忘れてしまったとはいえ、レナに一生消えない心の傷をつけてしまった。
レナの過去を知ってしまい、レナの傷は更に深いものになっていたことを知った。
(もう俺に…レナちゃんと顔を合わせる資格なんてねぇな…)
平和に付き合っていたあの頃が、夢のようだった。
レナのことを愛していた。
だから、心だけでなく身体も欲しくなってしまった。
隣で笑ってくれるだけで幸せだったのに…
様々な思いを巡らせ、サンジは朝までキッチンで過ごした。
ーーー
一方レナはその夜、医務室のベッドで一人思いを巡らせていた。
(私、ゾロのことが好きだったんだ…)
確かに今あるレナの記憶の中では、ゾロとはよく話をしていたと思う。
しかしこんなにも綺麗さっぱりと付き合っていた部分だけを忘れてしまうのかと、逆に感心してしまいそうだった。
いまいち実感はわかなかったが、ゾロがレナと付き合っていると言ったとき、仲間は誰も否定しなかった。
もし違うなら、誰か教えてくれているはずだ。
(それにしてもゾロと付き合うって…どんな感じだったんだろう…)
ゾロとの恋愛が想像できず、明日からどうしよう…とレナは心配になった。