第10章 記憶
その日の夜…
不寝番のゾロの元に、サンジがやって来た。
「何か用か、エロコック」
トレーニングをしていたゾロはサンジの方も見ずに言った。
「テメェ…どういうつもりだ」
「何のことだ」
「とぼけるな!!レナちゃんと付き合ってるなんて嘘つきやがって…」
サンジは今にも殴りかかりそうだった。
「俺ならアイツを傷つけたりしねぇ。テメェと違ってな」
「っ…クソ野郎…だからってそんな騙すようなこと…」
「この際だから言わせてもらう」
ゾロはサンジの方を向き、睨んだ。
「あの日アイツは…レナはテメェに話があるとか言ってなかったか」
「…何でそれを知ってんだ」
「俺はレナの過去を知っている」
ゾロがそう言うと、サンジの眉がピクリと動いた。
「勘違いするな。俺が無理やり聞き出したんだ。いきなり仲間になったアイツを信用できなくてな」
「レナちゃんの過去は…あのとき皆で全部きいたじゃねぇか」
「…前に乗っていた海賊船…本当にただの雑用係だと…信じたのか?ただの雑用係なのに、親を殺すと脅して逃げられないようにすると…?」
ゾロは鋭い目つきでサンジを見た。
「…どういう意味だ」
「…アイツは……あの船の船長に犯されていた…二年間ずっと」
サンジの顔色が一瞬で変わった。
「レナちゃんはッ…そんなこと何も…」
「テメェに言えるわけねぇだろ!過去を隠したまま付き合えねぇと…悩んでたアイツに付き合えと後押しした…あのときの自分を殴ってやりてぇ…」
ゾロは悔しそうに言った。
「………」
初めて事実を知ったサンジは、言葉も出なかった。
レナに拒否された理由がやっとわかった。
レナが処女ではなかった理由も。
「俺のやり方が正しいかわからねぇ…だがテメェにレナを任せられねぇ。アイツは俺が守る」
そう言ってゾロは再びトレーニングを始めた。
サンジは呆然とその場に立ち尽くし、しばらく経ってから展望台を離れた。