第10章 記憶
「他に忘れてしまったことがあれば、何でも教えるからね」
「ありがとう、ナミ。忘れたことを言うのはなかなか難しいけどね」
レナはそう言って笑った。
「思い出す限りでは…抜けてることはないとは思うんだけど。私が育った町のこと、ここの前にいた海賊船のこと…この船の皆に助けてもらったこと。全部覚えてるわ、たぶんね」
皆静かにレナの話をきいていた。
ただ一人、サンジは不安を隠せない様子だった。
(俺と付き合ってたことは…どうなんだ…)
「けどね、そんなに昔のことじゃないはずなのに…ラグラン海賊団の人たちの顔を、一人も思い出せないの。覚えておきたいわけじゃないんだけど…」
レナは額に手を当て考えていたが、やはり思い出せないようだった。
「確か、雑用係、だったわよね?」
「雑用係だったはずなんだけど…それもよく覚えてないのよね…まあ両親のこともあるし、あの海賊のことは忘れちゃいたいくらいだからいいんだけど」
レナもあまり気にしていない様子だったし、他の仲間も雑用係としかきいていなかったので、補足することはなかった。
唯一本当の過去を知るゾロも、何も言わなかった。
「あとね、皆の前できくことじゃないと思うんだけど…もう一つ気になることがあって…」
そう言ったレナは少し恥ずかしそうだった。