第10章 記憶
サンジはチョッパーに言われ、レナの食事を作っていた。
いつ目を覚ましてもすぐに食べられるよう、常に準備していたのであとは火にかけるくらいだ。
あの日から、サンジは生きた心地がしていなかった。
このまま目を覚まさなかったら…そんな事を考えてしまい、ほとんど眠れない日が続いていた。
だからレナが目を覚ましたときいたとき、サンジは心底嬉しかった。
しかし、レナに会うのが怖いという気持ちの方が大きかった。
サンジのせいでレナが男たちに襲われた…それはレナも知っているとゾロが言っていた。
真っ先にレナに謝ろう。
そして好きなだけ殴ってもらおう。
船を降りろと言うなら降りる。
サンジはそれくらいの覚悟はしていた。
(それなのに…記憶がねぇって…)
チョッパーの話をきいて、レナがどれほど辛い思いをしたのか改めて分かった。
自分の記憶を消してしまうほど、ショックな出来事だったのだ。
(それならいっそ…俺の事も忘れてくれねぇかな…)
ふとそんな考えが浮かんだが、慌てて取り消した。
(自分だけ苦しみから解放されようなんて…そんな甘いことを考えるから俺はダメなんだ…)
サンジは静観しているだけだったが、話し合った結果、レナに何が起きたかは言わないことになった。
(これから俺…どうすりゃいいんだ…)
レナの記憶がどこまで失くなっているのか分からないが、あの日の出来事だけを忘れているのならレナとサンジは付き合ったままだ。
レナが自分のことを好きでいてくれるのは嬉しいが、このまま何事もなかったかのように付き合っていくのは、サンジにはできそうもなかった。
(うだうだ考えても仕方ねぇ…レナちゃんの話を聞くまでは何もわからねぇ)
料理が完成し、チョッパーに持って行ってもらおうとトレーを準備していたときだった。
カチャ…
ダイニングの扉が開いた。