第10章 記憶
「…レナ、自分に何があったか覚えてないみたいなんだ。もちろん何があったかなんておれは言ってない」
チョッパーは深刻な顔で話した。
「人は、本当に辛い経験をしたときに自己防衛本能が働いて記憶喪失になってしまうことがあるんだ。自分を傷つけてしまわないように…だから…レナには何があったか言わないで欲しいんだ」
全員頷いている。
サンジはキッチンでレナの食事を作りながらきいていた。
「けどレナには…どう説明するの?」
ナミが尋ねた。
「そのことなんだけど…レナが混乱しないためにはどうしたらいいだろう…」
チョッパーが悩んだ様子で呟いた。
「…変に嘘はつかないで、正直に言った方がいいんじゃない?レナは記憶喪失だって…記憶を失くした理由はレナにとって辛いことだから言えないって…」
ナミは辛そうにそう言った。
「…それでレナ、納得するかな…?」
チョッパーは心配そうだった。
「レナならきっと…分かってくれると思う…」
確証はなかったが、ナミはそう思った。
「そうだな…そのほかのことで記憶が失くなっていることがあれば、皆で教えてあげよう」
チョッパーがそう言うと、またしても皆頷いた。
他に忘れてしまったことがあるのかどうか、まだわからない。
他のことは教えても、あの日レナの身に起きたことは教えないと決定したのだった。