第9章 代償 ★
レナは女の子と手を繋いで歩いていた。
家はすぐそこだと言っていたので、5分も歩けば着くだろうと思っていたが…もう15分は歩いていた。
「おうち、まだかなぁ?」
「うん!もうちょっとだよ!」
だんだんと町の中心部から離れ、人通りも少なくなってきた。
港まで戻れるだろうかと、不安になってきたときだった。
「着いたよ!」
女の子の指差す方を見ると、古い倉庫のような小さな建物があった。
女の子が扉を開き、レナにこっちに来るよう手招きをした。
レナは扉に近づき、そっと家の中を覗いたとき…
ドンッ
後ろから強い力で押され、倉庫の中へと押し込められた。
レナは驚きの余り声も出ず、状況も理解できなかった。
後ろを振り返ると、一人の男があの女の子に、お金を渡していた。
「よくやった。もう帰っていいぞ」
そう言われると女の子は、レナの方も見ずに走って出て行った。
レナも危機を感じ、急いで立ち上がり逃げようとするが、別の男に後ろから羽交い締めにされた。
「離してっっ!誰かっ…助けてーっ!!」
「叫んだって無駄だ。ここの壁は厚いからなぁ…」
無駄だと言われてもレナには男を倒す力はない。
助けを求めて叫び、男の手から逃れようと暴れるくらいしかできなかった。
レナの叫び声が響く中、倉庫の奥の方へと引きずられて行った。