第9章 代償 ★
デートの後半は、食材の買い出しをすることが多かった。
この日も二人は食材を買い出していた。
サンジは両手に荷物を抱え、レナは小さな袋を手に持ち歩いていた。
「それじゃあそろそろ船に戻ろうか」
「そうだね」
今日の夕食のメニューについて話をしていると、ドンッ、と何かがレナにぶつかった。
「うわぁぁぁん」
ぶつかったのは、小さな女の子だった。
7歳くらい…だろうか。
尻餅をついて泣いている。
「ごめんね、大丈夫?」
レナが声を掛けるが、大きな声で泣くばかりだ。
レナはサンジと顔を見合わせたが、サンジも困ったような顔をするだけだった。
レナはしゃがんで女の子に問いかけた。
「お母さんは?」
「グスン……おうち」
「おうちはどこ?」
「…すぐそこ」
そう言って指差したのは、レナ達が歩いてきた方向だった。
「おうちまで一緒に帰ろうね」
レナはそう言って立ち上がった。
「サンジ、この子家まで送ってくるね」
「俺も行くよ、すぐそこなんだろ?」
「お兄ちゃんやだぁ!お姉ちゃんと一緒に帰るぅ!」
女の子は駄々をこねるように座り込んでしまった。
「わかったわかった、お姉ちゃんと帰ろうね」
レナはそう言ってなだめた。
「何だかわからないけど、私と帰りたいみたいだから…先に船に戻ってて。私もこの子送ったらすぐに帰るから」
「いや、俺も離れてついていくよ。レナちゃんに何かあったらいけねぇし…」
サンジは心配そうだった。
「大丈夫だよ!人通りも多いし、この子のお家、ここから近いみたいだし。それにサンジ、荷物もたくさんあるでしょ。それじゃあ行ってくるね!」
行こっか、と言ってレナは女の子の手を取り、今来た道を戻って行った。
(確かに人通りも多いが…念のため、ここで待つか)
サンジはそう思い、道の端に身を寄せた。