第9章 代償 ★
第九章 代償
翌日ーー…
レナは、晴れやかな気持ちで出かける準備をしていた。
昨日はナミに連れ出され、いつも通りショッピングをしたりお茶を飲みながら他愛ない話をしていた。
サンジと気まずい雰囲気だったので、とてもありがたかったし、とても楽しかった。
ナミに勧められ髪を切ってみたが、サンジにも褒められ、過去の自分と少し決別できたような気がした。
そして久しぶりにサンジがキスをしてくれた。
レナがあの日、サンジを拒否してしまったことを、受け入れてくれたのかもしれない。
レナの方も今日、全てを話す約束をした。
不安はある。
しかしサンジなら、レナの全てを受け入れてくれると信じていた。
レナは浮かれた気持ちで女部屋を出ると、ゾロが甲板でトレーニングをしているのが見えた。
レナはゾロのもとへ行った。
「ゾロ…今日の夜ね、サンジに全て話そうと思うの」
「…そうか」
ダンベルの動きを止めず、ゾロは答えた。
「いろいろと心配かけてごめんね」
レナはそう言ってキッチンへと向かった。
ゾロはその後ろ姿を見つめていた。
「サンジ、お待たせ!」
「俺も今来たばかりさ。それじゃあ行こうか」
船を出た二人は、賑やかな通りを手をつないで歩いていた。
久しぶりのデートは特別なものではなく、街をぶらぶらして食料の買い出しをするといういつも通りのものだった。
しかしレナにとってはこれこそが、とても幸せだった。
(当たり前のようにサンジの隣にいられるって…なんて幸せなんだろう…)
サンジも同じ気持ちでレナとのデートを楽しんでいた。
(一緒にいるだけでこんなに幸せなんだ…欲張っちゃいけねぇな…)
幸福感が、油断と隙を生んでしまうのだろうか。
このとき、二人の後をつける黒い影があることに、サンジもレナも、気づいていなかった。