第8章 過ち ★
サンジは薄暗い寝室にいた。
誘ってきた女はナナという名前だという。
ナナは今、シャワーを浴びている。
サンジはナナに声をかけられたとき、ついて行く気など全くなかった。
レナと付き合う前なら喜んでついて行っただろう。
レナと付き合っている以上、裏切るようなことはしたくなかった。
しかし、ナナが身を翻したとき…その後ろ姿が、レナにそっくりだった。
顔は全く似ていないので正面から見たときは気がつかなかったが、後ろ姿は瓜二つだった。
髪型、背格好、歩き方…似ていないところを探す方が難しい程だった。
だからつい、引き止めて…ここまで来てしまった。
サンジは先にシャワーを浴びていた。
(ごめん…レナちゃん…けど俺…このままだとレナちゃんに優しくできなくなるかもしれねぇ…だから…一回だけだから…これが済めばキスだけでも我慢できるようになるから…ごめん…)
サンジはここに来たことを後悔していなかった。
このままだと無理やりにでもレナと行為に及んでしまうかもしれない。
今日、欲望を吐き出せたら、そんなことにはならないはずだと信じていた。
それに…レナと後ろ姿が瓜二つのこの女とすることで、レナとしていると錯覚したかった。
ガチャリ…
部屋の扉が開き、バスタオルだけを身に纏ったナナが入ってきた。