第8章 過ち ★
(ふぅ…)
サンジは一人、キッチンで煙草を吸っていた。
先ほどナミがレナを連れて船を出て行ったが、正直なところとてもありがたかった。
先日のホテルの件で、サンジはひどくショックを受けていた。
ベッドに押し倒したときは、正直イケると思った。
しかし結局拒否され、しかも初めてではないことがわかり、もやもやした気持ちが膨らむばかりだった。
(初めてじゃねぇなら…どこの誰としたんだ。いやでもそんなこと聞けねぇし聞きたくねぇ)
見たこともない男に嫉妬する自分が、嫌だった。
あれからいつも通りに接しているつもりだが、どうしてもキスができなかった。
本当はもっと抱きしめたい。
激しいキスもしたい。
しかし、これより先に進んでしまうのかとレナを不安にさせるかもしれない。
サンジはレナの心の準備ができるまで、待ちたかった。
それに、キスをすると自分の欲求に歯止めがかからなくなるかもしれない。
自分を抑えられないかもしれない…
嫌がるレナに無理強いなんて絶対にしたくない。
しかし欲求は溜まる一方で…
(こんなに長いこと溜めたのは初めてだ…いつもは適当にナンパしてたけど…そんなわけにもいかねぇし…)
何よりも、サンジが愛し合いたいのはレナだけだ。
毎回島に着く度にナンパしていた自分を、懐かしいとさえ思った。
ただ、このままだといつかレナに自分の欲望をぶつけてしまうかもしれない。
サンジは、それが怖かった。
(レナちゃんを傷つけることだけは、絶対にしたくない)
抱きたい、けどレナの準備ができるまで待ちたい、けどもうそろそろ我慢できない…
そんな思いが頭の中を駆け巡り、自分でもどうすれば良いのかわからなかった。
(…買い出しでも行くか)
そうしてサンジは煙草の日を消し、船を降りて街へと向かった。