第1章 ● はじまりの唄
「……全然違うんだね。おなじ国にいるのに、全然違う」
違うんだ。
きらきらのお星さまも。
笹の葉を揺らす夜風も。
「菅原くんの空では織姫と彦星、会えるのに」
空はひとつに繋がっているはずなのに。おなじ時を生きているはずなのに。私たちは、別々の景色を見上げてる。
まるで、世界ごと切り離されちゃったみたい。
悲しいな。
悲しくて、寂しい。
恋しいよ。
菅原くん。
あなたに、会いたい。
でも、──会えないんだ。
350kmも離れた空。
星降る満天のしたにいるであろう彦星(あなた)を想って、天を仰ぐ。
涙が、こみあげて。
「……こんな空じゃ、あなたの姿を見ることすらできない」
赤雲臨むベランダで催涙雨をほろり。人知れず、ひとり。縮まることのない彼との距離を憂いて溢した。
『でもさ、ほら』
ぱ、と明るく咲いた声がした。
私とは相反するその声音に、沈んでいた感情が引きあげられる。浮上する。
『俺たち今、隣にいれないからこそ、のことしてるべ?』
「……へ、……?」
『空の交換。俺の見てる空と、夕璃の見てる空』
「空の、交換……?」
ストン、と。
何かが落ちたような。
そんな気がした。
さっきまであんなに苦しかったはずの息。でも、今はちゃんと呼吸ができる。憂いの涙もいつの間にか止んでいる。