第6章 ● おんなじ空、見上げて
(んんー、どこが、いいかな)
雑誌と睨めっこしながらデートコースを考える。
遠路はるばる彼が会いに来てくれたのだから、最高にすてきな思い出にしたい。孝支くんにも、そう思ってほしい。
なので必死だった。
試合前の戦略を練ってる選手さながら、ああでもない、こうでもない、って頭を捻る。
夏合宿のとき、天空の塔への憧れを語っていた孝支くん。だからここはマスト。絶対に行かねばならない。
そうしたらやっぱり直結してる水族館にも行きたいし、ちょっと足を伸ばせば浅草もある。さっきのおばあちゃん、無事に着けたかな。
あとは、ここ。
世界一有名な【彼】が経営してる夢と魔法の国だ。決して名前を出しちゃいけないねずみさん。夜からのパスポートを使えば花火だって楽しめる。
うん、いい感じに決まってきた。
大事な大事な孝支くんを放ったらかしにしていることにも気づかず、うんうんとひとり頷いていたときだ。
ふ、と聞こえたのは彼の笑み。
「もう太陽、あんなとこにいんだなー」
その柔和な響きにつられて顔をあげた。すっかり明るくなった窓の外。
見やれば、それは。
高層ビルの隙間にちょこっとだけ見える水色。光化学スモッグ注意報が出ちゃいそうな、見慣れた空。
昨晩調べた天気予報の記憶を引き出して、げんなりと彼に伝えてみる。
「今日ね、……31℃なんだって」
「げ、それ確実にとけるやつ!」
だよねえ。溶けるよねえ。暑いのは体育館のなかだけにしてほしいよね。あ、それ俺も思う。超同感。
やいの、やいの。
毎日暑すぎる夏に対して不平不満。高校生らしく騒いでいたんだけど、急に、彼が真剣な表情になって。
「なあ夕璃、気づいてた?」
「ん? なにに?」
「俺たちいま、……おんなし空みて喋ってる」
ぽろ、と、目から何かが落ちた。