第6章 ● おんなじ空、見上げて
これが鱗ならよかったのに。
ぽろぽろと落ちるのはやっぱり涙の粒。散々泣いたはずなのに、涙腺は全然枯れてくれなくて。
「……また、お化粧が、うう」
せっかく直したメイクがまたも崩れゆくのだけれど、でも、そんなことより私は──
『おんなし空みて喋ってる』
私が気づきもしないようなことを美しい言葉で紡いでくれる、あなたが。
あなたが傍にいてくれることが。
奇跡のように尊い孝支くんが、私とおんなじ世界を共有してくれていることが、うれしい。
溢れるうれし涙は、止めどなく。
とびきり優しく眦を拭ってくれたあなたの温もりに、うっとりと目を細めた。
「よしっ、そろそろ行くべ!」
差し伸べられる掌。
手繋いでくれるの?
んん、野暮なことは言わないよ。
重ねるふたりの体温。
ゆっくりと、おずおずと、絡まる五指はいわゆる恋人の。
ねえねえ、孝支くん。
私たち繋がってるね。心も、熱も、空も、ぜんぶ。今だけは、はんぶんこじゃなくて、ひとつだね。
あなたの半分と。
わたしの半分と。
合わさって、ひとつ。
1 + 1 = 1
ほら、やっぱり奇跡でしょう?