第6章 ● おんなじ空、見上げて
「チェーン店のはずなのになー」
BLTサンドのBもLもTも、ひとつもこぼすことなく綺麗に口へ運んでいく孝支くん。
その美味しさにビックリしているらしい彼は、もぐもぐする傍らでぼんやりとひとり言を落とした。
カラン、と氷が爆ぜる。
実を言うとロイヤルミルクティーの味なんて全然分からないくらい、私は眼前の奇跡に心奪われていた。
孝支くんがいる。
私の前に座って、おしゃれなサンドイッチ食べて、時々視線がぶつかるの。そしたら照れくさそうに微笑んでくれる。
もうこれ何ていう少女漫画?
まさに興奮冷めやらぬ、だ。
こんな調子で今日一日大丈夫だろうか。いつか鼻血とか出すんじゃなかろうか自分。
今日、一日、というワードに。
そういえば大事なことを決めていなかったと思い出す。
「なあ、どこ行きたい?」
「ねえ、どこ行こっか?」
口を開いたのはまたも同時。
お互いのカバンから引っぱりだしたウォーカー雑誌までおんなじで。シンクロ率400%超えて暴走しちゃうんじゃないかな、私たち。
烏野高校のシンジくん、こと、私の大好きな彼は気になるページをドッグイヤーしていた。
梟谷学園のアスカさん、こと、ドイツ語のドの字も喋れない私は水玉の付箋を貼っつけている。
今日という特別な一日を想い、心待ちにしながら捲ってきた雑誌のページ。
彼と行きたいデートスポットや、彼を連れてってあげたい激辛タンメンのお店。おんなじ雑誌を読んでいたのだから、当然といえば当然なのかもしれないけれど。
ここも、こっちも。
ぜんぶ、ぜんぶ、一緒なの。
奇跡でしかないでしょう?
私たち、前世では双子だったのかな。結構本気でファンタジーなことを考えた。