第3章 ● ハートビート・イヴ
「でも、連絡はちゃんとなさいよ」
「はいわかりました」
「危ないところにも行かないこと」
「承知してマス」
「あと避妊はしなさい、これ重要」
「……っな、ちょ、お母さん!」
仮にもうら若き乙女である私に対してとんでもないことを口走る母。
でも、その瞳は真剣だ。
お父さんが聞いたら卒倒しそうな台詞。だけど、親からしたらきっとそれはとても大事なこと。
娘のことを。
私のことを。
心から案じてくれているのだ。ならば真摯に受け止めよう。そう思う。
「もしそういうことになったらちゃんとします。ありがとう、お母さん」
ちょっと、だいぶ、かなり照れくさかったから早口で全てを言い終えた。
ペコッと頭を下げて踵を返す。
まだ夜ごはん食べてないけど、恥ずかしくって夕食どころじゃない。
とりあえず、そう、お風呂。
お風呂に入って一旦落ちついてから、お母さん特製のビーフシチューをいただこう。
ぶつくさと独りごちて、脱衣所までの道のりを歩む。
「泊まってくるなら相手の親御さんにもちゃんと許可取りなさいよー!」
母の爆弾発言その2が、キッチンから嘘みたいな大声で飛んできた。
女は強し。
母も強し。
オバちゃんはもっと強し、である。