第3章 ● ハートビート・イヴ
「烏野って小さな巨人の?」
「──……ん、え、巨人?」
「ちょっと前に全国出てたでしょう? かっこよかったわよねえ、あの子。OB会に顔出したりしてないのかしら?」
「……え、っと、お母さん?」
質問と質問の応酬だった。
まったく会話が成立しない。クエスチョンマークのバーゲンセールである。
混乱する頭を整理して、整頓して。
ええと。
小さな巨人って、たしか孝支くんたちの先輩だ。
初めて彼ら、烏野高校が合宿に参加すると聞かされたときに調べただけの、淡い知識。
顔は試合写真を見ただけだから何とも言えないけれど、まあたしかにイケメンだった気がする。でも孝支くんのほうがイケメン。これ絶対。
じゃ、なくて。
話が脱線事故だよもう。
気を取りなおして、再度、母に明日の是非を問おうとした。しかし、先手を取ったのは母のほうで。
「あ、デートね、いいわよ」
「……へ、え、いいの!?」
「だって、その為に一生懸命バイトしてたんでしょう? 部活も勉強も大変な時期なのに、よく頑張ったじゃない」
改めて実感する、母の偉大さ。
まっすぐに伝えればまっすぐに返してくれる。深い深い無償の愛に触れた気がして、少しだけ目頭が熱くなった。