第2章 ● おしごとしましょ
「はんぶんこがいいの。孝支くんと一緒に楽しいことするなら、全部はんぶんこがいい」
素直なきもちを伝えたら、そんな私の想いに応えたいって、彼もバイトすることを決意してくれて。
地元の先輩のとこでお祭りスタッフするんだっけ。
おしごとしてる孝支くん、きっとかっこいいんだろうなあ。彼の姿を思い浮かべるだけで唇が弧を描いた。
そんなわけで、お話は現在進行形。
「玉北さ~ん、休憩いっといで~」
「え、もうですか?」
「いいのいいの、暑いし休んじゃえ~」
のんびりした口調で促してくれるのはADのおじさんだ。何度か現場で会ったことがある。
彼、すごく適当なひとだ。
もちろん良い意味で。
イベント系の派遣バイトは一日中立ちっぱなしのことが多いけれど、その分休憩も多くもらえるし時給も良いから嫌いじゃない。
それに、何より。
「じゃあちょっと客席いってきます」
「あいよ~、行っといで~」
お客さんに紛れてイベントが楽しめちゃうのだ。しかも今日は、有名アーティストが結集している野外音楽フェス。
これを楽しまない手はない。
いそいそとスタッフTシャツを脱ぎ捨てて、向かった先は熱気の渦。会場を埋めつくすサウンドと観客の大歓声に、血沸き、肉躍る。
お客さんたちのハンズアップに合わせて天高く手をかざそうとした、そのときだった。