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君が笑う、その時まで

第17章 再会


◆◇伊月視点
 ドリンクの注文を済ませ、自分の席から改めて周りを見渡す。
 座敷には2年と1年トリオ、テーブル席には火神と黒子が座っている。
 テーブル席には他に黄瀬や海常キャプテンの笠松さん、それに彼女がいる。

(たしか大前伊織さん、だよな……)

 俺がこうして彼女を間近で見るのは4月の1年との初試合後と海常との練習試合の時以来だ。

 その印象は、とにかくインパクトが強かった。

 もちろん俺たちの前でバスケがくだらないと公言して第一印象を悪くしたっていうのもある。

 だがそれ以上に俺が印象に残ったのは、ギャラリーからコートを眺めていたときの横顔だった。

 あの時、彼女は笑っていた。

 それも、ただ笑っているのではない――それはまったく嬉しさを感じさせるどころか、今にも泣きそうなくらい悲しげで、寂しげだった。

 以来、ずっと気にかかってきた。

 ただし学年の差であったり彼女自身が俺たちを意識して避けていたりと、普段の学校生活で彼女と関わる機会はこれまでほとんどなかった。

 彼女はあまりに謎が多すぎる……。

 それにやっぱり気になるのはあの言葉だ。


 ――バスケなんてくだらない。


 そう言う彼女の、暗い影を落とした顔を今でも忘れることができずにいる。
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