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君が笑う、その時まで

第10章 背中の意味


 練習試合が終わり、緊張感の解けたコートでは選手同士が和やかに談笑していた。

「……………………。」

 ベンチからぼんやりと眺めていた私は彼らを一瞥して片付けに入った。
 手はじめに得点版を片づけに行くと、そこに黒子がいた。

「手伝います」

「…ん。どーも」

 黒子に手伝ってもらいながら得点版を倉庫へ運ぶ。

 途中、黒子の頭に巻かれた包帯が目について先ほど終わったばかりの試合を思い出した。

「無茶したね。黄瀬といい黒子といい、注意力散漫すぎる」

「すみません」

 からかい半分で言った言葉でさえ彼は真面目に応えてくれる。
 私はそれ以上言うのをやめて片付けに専念することにした。

 倉庫の中へ得点板をしまう。
 海常の1年生の助けもあってか、大方の片付けは終わった。

 一息ついて背伸びをしていると、不意にそれとなく視線を感じた。

 脱力し、視線を送っている方へと見やる。
 
「ん?どうした黒子?」

「どうでした?試合」

 相変わらず何を意図しているのか分からない淡い瞳に覗かれる。
 
 私はいつものように「くだらない」と言ってしまえばよかった。

 それなのに、私の口から出たのは自分でも意識していない言葉だった――

「ケガしてまでも試合に出るなんて、とんだバカのすることだよ。

 どうしたらあんなに真剣になれるんだよ……」

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