第10章 背中の意味
見やれば、海常レギュラーの中でもっとも眩しかった彼が呆然と立ち尽くしていた。
その表情に試合中の気迫に満ちた様子もなければ、試合前の浮かれた雰囲気もない。
純粋に試合に負けたことを悔しがっていると、そう思えた。
そうであれば、ここが彼にとっての再スタートだ。
自分がこれまでやってきたことを全否定されたような思いがあるのなら、それをバネにして練習していけばいい。
今までの自分の実力に過信していたのだとしたら、今回の結果は自分が発展途上であることを思い知った機会であり、立ち直るきっかけに十二分なりうる。
彼ならきっと立ち直れる。
確証は彼の近くにあるのだから――
「――――んのボケッ!めそめそしてんじゃねーよ!つか、今まで負けたことねえって方がなめてんだよ。そのすっかすかの辞書に、リベンジって言葉、追加しとけ!」
体育館に響く、力強い声。
黄瀬の頭を掴んでいた笠松さんの表情は心なしか安心しているように見えた。
笠松さんに促され、ルーキーは涙を拭い整列に向かう。笠松さんも彼の背中を押すように整列に向かう。
その姿を見て、羨ましいと密かに思った。
審判による号令がかかる。
こうして激戦となった練習試合は誠凛の勝利で幕を閉じた――