第30章 誓い
その人は僕にボールを返すわけでなく、ゴールを見据えてその場からボールを放り投げた。
ボールはきれいな放物線を描き、吸い込まれるようにゴールリングをくぐって落ちた。
シュートを見届けてからその人は僕に焦点を合わせた。
?「けどま。少し安心した」
黒「え……?」
返事に窮している僕を尻目にその人はボールを拾いに行った。
初めて見る背中であるはずなのに、前にどこかで出会っているかのような既視感を覚えた。
?「ここ1ヶ月くらい毎日練習してるわけだし。君はよほどバスケが好きなんだね」
バスケが好き。その言葉に僕は嫌悪感に襲われた。
黒「僕は……あんなバスケは嫌いです」
その人は鳩が豆鉄砲を食ったようにきょとんとしていた。
?「それじゃあ訊くけど――君にとって好きなバスケって何なの?」