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君が笑う、その時まで

第28章 re:start


 適当なところで彼と別れた私は病院のエントランスホールを横切り、人目に付かない喫煙所に向かった。

 一般にも開放されている所為か患者を含む一般人も利用する中で、私が探していた人物はひと目で分かった。

伊織「ご無沙汰してます、南波先生」
南「おー、来てたのか」

 ベンチの背もたれにすっかりふんぞり返った白衣の男は私に気付くと伸びきった上半身を起こした。

南「鉄平君の見舞いに来たんだろ?どうだった?」
伊織「元気そうでしたよ。あの調子だと退院したらすぐにバスケするんじゃないですか」
南「はは。後であまり無茶しないように言っとくか」

 南波先生は煙草を灰皿に押しつけ、手を組んだ姿勢で私の顔を覗き込んできた。

南「で、お前のいる高校の…誠凜だっけか。インターハイ、残念だったな」
伊織「ま。実力相当なんじゃないですか」

 先生としてはかなり気を遣った訊き方だったが、私は大袈裟な反応を見せることなくさらりと答えた。

伊織「メンタルが完全に崩壊する前にインターハイが終わって良かった、ってことでいいじゃないですか」
南「…………。」

 南波先生の視線が私の目から膝へと移る。

南「……膝の調子はどうなんだ?」
伊織「別に可もなく不可もなしですよ。これ以上良くならないことは先生もご存じでしょう?」

 膝頭に手を当て、苦笑する。ふと先生の強い眼差しが無視できなくなり、顔を上げて彼の視線に応える。

伊織「無茶するな、ですよね。分かってますって」
南「…ぜってー分かってないだろソレ」
伊織「先生は心配性ですね。あんまりしつこいと彼女に嫌われますよ」ニシシ
南「だから彼女いないっての」
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