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君が笑う、その時まで

第28章 re:start


◆◇伊織視点
 ナースステーションに声を掛け、彼の病室に向かう。

 しかし、当の本人はベッドの上にはおらず外出中であった。

 いつもならしかたないと出直すのだが、今日は手土産があり、私自身彼と話したいと思っていた。

 彼を探しに廊下を歩いているとラウンジで一際大きな背格好の入院患者を見つけた。

 あれほどの背丈をもつ人など……彼ぐらいしかいない。
 さらに付け加えるとすれば、腰に手を当てて風呂上がりの一杯のような格好で飲み物を流し込み、激しくむせるヘマをやらかすのは彼以外には考えられない。

伊織「何やってんだか……」
木「けほ……おお、君か」

 息を整えて彼は私ににこりと笑いかけた。

 空になった缶をゴミ箱に押し込み、傍らの松葉杖をついて歩き出そうとする。
 私は慌てて「いいよ、そのままで」と彼の元へ駆け込んだ。
 だが、彼は松葉杖を置くことはなかった。

木「なぁ、屋上行かないか?」
伊織「屋上に?」
木「せっかくいい天気だしたまには外で話すのもいいと思ってな」
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