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君が笑う、その時まで

第27章 期待と怠惰のあいだ


 青峰君は一瞬驚いたように目を見開き、すぐさま元の気怠い目に戻った。

青「……わーったよ」

 ぼりぼりと後ろ髪を掻きながらぶっきらぼうに吐き捨てる。ベンチに置いたままのナイロンバッグを肩から提げコートの外へと出ていく。

 そして私の傍を通り過ぎる一瞬――

 その腕を掴んだ。


伊織「ちょ…!?」

 突然の事に私は咄嗟に掴んできた腕を振り払おうとする。
 しかしそこには力の差があり、結果的により一層強く掴まれただけだった。

 痛みに顔をしかめ、おそるおそる上目遣いに彼を見やる。
 
 青峰君のまっすぐな視線が自分に向けられる。

 それはさっきまでの気怠さを微塵も感じさせない、澄んだ瞳をしていた。

 青峰君はさっき「試合には出なくていい」と言った。
 そして1on1をやって、やっぱり彼はバスケが好きなんだと思った。

 いつからそうなってしまったかは分からないけれど。

 彼は周囲の雰囲気を敏感に感じ取り、自分の全力が相手のレベルにかなっていないと気づいてしまった。

 だから本気を出せない。出したくても出せない。
 だから強い相手が現れるまでバスケとうまく向き合えなかった。

 本当はこんなにもバスケをしたい気持ちが強いのに。
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