第23章 微熱に注意
◆◇高尾視点
伊織「……ウソ。」
そういって伊織ちゃんは両手で額を触る。
その仕草が可愛いなんて思ったりもしたが、今はそれどころじゃねぇ。
高「伊織ちゃん、家どっち?急いで送ってくっから――な、真ちゃん」
緑「あ、ああ……。」
けれども伊織ちゃんは俺の肩をぎゅっと掴んできた。まるで拒むように。
伊織「大丈夫。ひとりで帰れるから」
こんなときでも伊織ちゃんは笑っている。
あの時の余裕綽々(しゃくしゃく)な感じも今ではただの強がりにしか見えない。
せっかく頼れる相手がいるって言うのになに無茶してんだよ。
伊織「時間も遅いし、2人は親御さんが心配するし――」
高「それは伊織ちゃんも同じだろ。てか、伊織ちゃんは病人なんだから俺らに気遣う必要はねーんだぜ」
伊織「高尾君……」
高尾君、か……。今日はまだ一回も下の名前で呼んでくれてねーよな。
高「和成。前にそう呼んでって言ったはずだけど?」ニカッ
伊織「…和成、くん。ごめん。緑間君も、」
緑「…俺は何もしていないのだよ」
伊織「迷惑かけて、本当にごめん……」
そう言って伊織ちゃんは俺の肩から手を離した。