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君が笑う、その時まで

第23章 微熱に注意


◆◇伊織視点

客「ここのコロッケ、孫が大好きなんだよ」
伊織「そうなんですか。ありがとうございます」

 おばさんが財布を鞄の中にしまったのを見計らって私は商品の入ったビニル袋を手渡した。

伊織「毎度ありがとうございましたー」

 客が行ったことを確認して空になったトレーを厨房へ運ぶ。

伊織「昔のコロッケ、あがりました」
マサ「おう」

 むわっとした暑さの中、油がぷつぷつと泡立ち、香ばしいにおいが立ちこめる。

 ここ蓮華堂は 商店街で古巣の総菜店だ。

 ひとりで厨房を仕切っているのはこの店の店主のマサさん。父の代から続く小さな総菜店を奥さんとともに切り盛りしている。

 私は学校帰りにここでバイトをしている。

 コロッケやメンチカツを中心に商品をそろえているが、中でも店の看板メニューは「昔ながらのコロッケ」だ。グリンピースにジャガイモというシンプルな食材を使った、中はホワホワ外はカリカリの鉄板メニュー。美味しくて安いため、いつも店仕舞い前に売り切れてしまう。
 そして今日も例に漏れず、先ほどの客で売り切れた。

 私は「完売御礼」の札を準備するために、紙とペンを探す。

 そこへ声が掛かった。

?「すんませーん」

 見やれば、高校生の2人組がいた。私は慌てて営業スマイルに戻る。

伊織「いらっしゃいませー」
?「…もしかして伊織 ちゃん?」

 どこかで聞き覚えのある声に営業スマイルを解き、細めた目を開ける。

 今時珍しい黒の詰めより。
 やたらとノリの軽い黒髪の少年と、いろいろと特徴がありすぎる緑の髪の少年。


 私は以前に彼らに会ったことがある――
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